歯科衛生士座談会②
symposium treatment歯科衛生士の処置で改善した歯周病の症例
こちらでは、「戸越なかやま歯科」の歯科衛生士による特別座談会をお届けします。歯周病の改善には、歯科衛生士による処置が欠かせません。歯肉炎→軽度の歯周炎→中程度の歯周炎→重度の歯周炎」の症例をもとに、歯科衛生士がどのように処置したのかを解説します。
座談会参加者:左から中山亮平(歯科医師)・森田奈留(歯科衛生士)・加藤天音(歯科衛生士)・林千明(歯科衛生士)
歯肉炎の改善症例
加藤:歯科衛生士の処置で改善した歯周病の症例についてお話しますが、まず歯肉炎の患者さまからご紹介します。
こちらの患者さまは18歳・高校生の男性ですが、歯ぐきが凄く腫れてしまっています。
森田:普段からブラッシングを全然されていなかったそうです。しかも、歯医者にも小さな頃から通院されていませんでした。
加藤:歯石も付いている状態ですし、ブラッシングをしていないことにより、プラークが溜まっていました。
森田:ライフスタイルについても詳しくお聞きすると、就寝時間も不規則だったり、お食事のバランスも崩れていたりと、お口にとって良くない環境だということが分かってきました。
加藤:ちなみに、歯肉炎と歯周炎との違いをお伝えすると、歯肉炎は歯ぐきが腫れている状態で、歯周炎は歯を支える骨が溶けている状態の違いです。こちらの患者さまは重い歯肉炎ですが、まだお若いこともあり、歯石やプラークが付着しているものの、骨の吸収はほぼ起こっていませんでした。
ブラッシング指導を丁寧に行い、実践していただくことで症状の改善を図りました。
林:この症例から分かることは、やはり小さい頃から歯医者に通う習慣を身に付けていただきたいということです。定期的に歯医者に通っていれば、お口の状態が客観的に分かりますし、ブラッシング指導などを通じて、磨き方の癖を改善することができます。
加藤:それに、小さな頃から歯医者に通えば慣れるので、歯医者に対する抵抗感が少なくて済むと思います。
森田:ぜひ、お子さまも気軽に来ていただきたいです!
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症例タイトル 歯肉炎の症例 患者さまの主訴 ブラッシング時の出血 治療内容 ブラッシング指導 ライフスタイルの改善 患者さまの年齢 18歳(高校生) 患者さまの性別 男性 治療期間 3ヶ月 治療費用 保険適用 治療する際に起こるメリット 炎症のない口腔内の獲得、口臭予防 治療する際に起こるリスク・副作用 一時的な知覚過敏
軽度の歯周炎の改善症例
森田:次は、歯周炎の方の症例です。
こちらの患者さまは、「歯ぐきから血が出る」と訴えられてご来院されましたが、写真を見ても歯石がハッキリと見えるくらい付いていました。
歯間部に歯石の沈着を認める
レントゲン写真に歯石が映っていますが、全体的に歯石が付いてはいるものの、骨の状態がそこまでは下がっていません。歯周ポケットも、4~5ミリでまだ浅い状態です。ですから、軽度の歯周炎と判断して歯石を除去する治療からスタートしました。
加藤:こちらの患者さまもまだお若いので、歯石を除去したうえでブラッシング指導を行い、しっかりとメインテナンスを行った結果、歯ぐきは少しずつ改善していきました。継続してメインテナンスを受けることで、良い状態を維持できるはずです。
森田:でも、ここで気を抜いてメインテナンスを中断してしまうと、また元の状態に戻ってしまいます。やはり、しっかりとメインテナンスを続けることが肝心です。この症例のように、軽度の歯周炎は、比較的改善しやすいのが特長です。
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症例タイトル 軽度歯周炎の症例 患者さまの主訴 歯ぐきから血が出る 治療内容 歯石除去 ブラッシング指導 メインテナンスの継続 患者さまの年齢 26歳 患者さまの性別 男性 治療期間 5ヶ月 治療費用 保険適用 治療する際に起こるメリット 口臭の防止・歯周病の進行を止められる点 治療する際に起こるリスク・副作用 一時的な知覚過敏
中程度の歯周炎の改善症例
森田:こちらの患者さまは、中等度の歯周炎です。
まだ28歳でお若いですが、歯ぐきから血が出るとのことでご来院されました。パッと見て歯石はそこまで目立ちませんが、レントゲンを撮ったり、歯周ポケットを確認すると炎症が強く出ています。
加藤:歯周ポケットを確認したら、6ミリもありました。
森田:まずは、歯と歯ぐきの際の部分に歯石が付いていたので落としていきました。それに加えて細菌検査も行い、細菌の種類や量を確認しましたが、P.g菌が検出されました。
検査結果はP.g菌が全体の10%も検出されたので、かなり多いと言っていいでしょう。この結果も踏まえて、「この段階でしっかりと歯周病を治療しましょう」とお伝えしました。
加藤:患者さまもご納得されました。
森田:こちらの患者さまは、歯ぐきの中の歯石を取る必要があったので、自費治療になりますが一度に歯石を取る治療法をご提案しました。保険治療でも歯石の除去はできるのですが、一度にできる箇所が限られてしまいます。そうすると、せっかく歯石を除去してきれいにしても、他の部分から細菌が感染してしまう可能性が高いです。それを防ぐために、一度に歯石を除去した方がいいと判断しました。
加藤:歯石を除去した後に再検査を行うと、P.g菌がほとんどない状態にまで改善できました。P.g菌の中にも遺伝子型が分かれています。検査の結果分かりましたが、こちらの患者さまは1型という病原性が比較的低い型だったことも幸いしたのかもしれません。
森田:前後のお口の写真を比較すると、かなり改善されたのが分かるかと思います。腫れていた歯ぐきが、きれいな三角形になっています。ここまで変化するのに、約5ヶ月かかりました。上の前歯にも注目していただきたいのですが初診時には歯と歯の間が離れていましたが最終的には炎症が引いたため隙間が閉じていることも分かります。
P.g菌が検出されないことを確認できたら、メインテナンスに移行します。
中山:最初の18歳の歯肉炎の患者さまも、こちらの28歳の中等度の歯周炎の患者さまも、幸い改善したのは喜ばしいことです。でも、考え方を変えるとお若いにも関わらず歯肉炎や歯周炎などの歯周病になってしまうこともあり得るということです。若いからと言って、予防やメインテナンスを怠ってはいけません。
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症例タイトル 中程度歯周炎の症例 患者さまの主訴 歯ぐきから血が出る 治療内容 自費診療による歯石除去 細菌検査 患者さまの年齢 55歳(来院時) 患者さまの性別 女性 治療期間 6ヶ月 治療にかかった費用(概算) 20万 治療する際に起こるメリット 歯周病で動いてしまった前歯が炎症が引くことで元の位置に戻った点・重症化の防止 治療する際に起こるリスク・副作用 知覚過敏
重度の歯周炎の改善症例
山本:最後に重度の歯周炎の患者さまですが、今現在治療の途中です。
パッと見た感じでは、重度の歯周病であることは分からないかと思います。こちらの患者さまは、歯が揺れていると訴えられてご来院されました。
加藤:見た目だけでは分からないのでレントゲンを撮影することで、深い部分が見えてきます。
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症例タイトル 重度度歯周炎の症例 患者さまの主訴 歯が揺れている 治療内容 自費診療による歯石除去 細菌検査 ブラッシング指導 歯周組織再生療法 患者さまの年齢 43 患者さまの性別 女性 治療期間 1年6ヶ月 治療にかかった費用(概算) 再生療法 20万/回 治療する際に起こるメリット 失った骨の再生 治療する際に起こるリスク・副作用 歯周組織再生療法後の一時的な腫れや痛み 知覚過敏など
森田:レントゲンから分かることですが、全体的に骨の位置がかなり下がってしまっています。特に右下の奥歯は、骨がだいぶなくなってきています。
林:やはり、見ただけでは分からないのも歯周病の怖さの一つです。そのせいもあり、こちらの患者さまは発見が遅れてしまいました。
中山:それからもう一つ怖いのは、これだけ重度の歯周病になっていても、普段の生活に影響がないケースもあるということです。こちらの症例は、「歯が揺れて困っている」という症状がありましたが、患者さまの協力もありスムーズに治療することができました。でも、重度の歯周病であっても、特に困りごとがないケースもあります。そうなると、患者さまも歯周病であることにすら気付けません。
林:その意味でも、定期的に歯医者に通ってお口の中を診てもらう習慣が欠かせません。
森田:歯周ポケットを確認すると、8ミリでかなり進行しているのが分かります。それに、歯ぐきからは出血だけでなく膿も出てきていたりと、かなり良くない状態だったので、「早急に治療しましょう」とお伝えしご納得いただきました。
加藤:重度の歯周病の患者さまにも、初めに行う基本的な治療法はほとんど同じです。歯石やプラークを除去したり、ブラッシング指導を行ったりします。また、患者さまによる日々の口腔清掃も重要なので、フロスや歯間ブラシの使用も推奨しています。
森田:歯石を除去した後に改めて検査を行い、どれくらい炎症が改善されたのかをチェックします。
中山:改めて思うのは、歯周病も他の病気も同じですが、早期発見・早期治療がいかに大切かということです。こちらの患者さまは、重度にまで歯周病が進行して骨が溶けて歯ぐきが下がっているので、遅くなればなるほど機能的にも審美的にも回復させるのが大変です。だからこそ、定期的に歯医者に通って歯科衛生士に診てもらうのがベストです。