SRP(非外科治療)で生じる骨再生の可能性
歯科衛生士が行う組織再生のための理解と実践
歯科衛生士の行うSRPはしっかりと行うことができれば、もちろん歯種や患者の健康状態にも左右されますが歯周病で失った骨の再生を導くことが出来る可能性の高い治療です。
特に歯周外科と比較した場合SRPは“切開しない”という大きなメリットがあるため、患者の身体的な負担軽減だけではなく組織の再生に必要な血餅の保持(blood clot stability)にも大きなメリットがあると考えています。
もちろん万能な処置ではなく『歯根面に歯石など感染物質が完全に除去されている』という大前提があるため複雑な根形態を有する場合の歯周病に対しては歯周外科の方に優位性がある場合も少なくありません。なので重要なことは、歯科医師・歯科衛生士が治療前に十分に話し合いを行い歯周外科を前提にSRPをするのか、もしくはSRPだけである程度治癒が見込めるのかをきちんと話し合う必要があるわけです。これは個々の患者に対して常に必要な対応だと考えています。もう一つ大切なこととして、SRPを行う場合には高倍率のルーペで行った方が良いと考えています。たまに手指の感覚でやればできる!という意見も聞きますが、それは高倍率ルーペでの視野を知らない人の意見だと思っています。ただでさえ小さい歯の表面に付着しているさらに小さい歯石や汚染物質を除去するわけですから当然視野は広く拡大されている方が良いに決まっています!当院では衛生士全員が歯科医師と同じく8倍の高倍率ルーペを使用し診療に当たっており、それが高い治癒率に繋がるその一助になっていると考えています。
また歯肉炎や歯周病が落ち着いた後に歯と歯の間が黒く抜けてしまう状態があります。(ブラックトライアングル)この状態になっても長く経過を見ていくとクリーピングという現象が生じ歯肉が元の位置に戻ってくる場合があります。これが生じる要因として大切なものの一つにSRPできちんと感染源が除去できている、ということがとても大切になってきます。なのでこのようなことが生じる可能性が最初の段階で期待できる場合にはすぐに歯肉移植などを行わず経過観察を噛み合わせなどにも注意しながらしっかりと行なっていくことが重要だと考えています。
最後になりますが、なんでもかんでも外科的な再生療法という考え方や、絶対に非外科しかダメ!といった偏った考え方ではなく、
その患者さんにあった方法をしっかりと考え提供していくことがとても大切である!と考えています。