食生活で起こってしまう疾患 〜酸蝕症とう蝕〜
酸蝕症ってどんなもの??
こんにちは。
そろそろ各地でも梅雨入りのニュースが聞かれる頃なのではないでしょうか。とはいえ、この頃の季節外れの暑さには雨も待ち遠しいですね。
皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
今回は、『酸蝕症』についてお話ししたいと思います。
皆さんは、酸蝕症という言葉を聞いたことはありますか?
酸蝕症は、毎日の食習慣によって誰にでも起こりうる疾患なのです。
酸蝕症とは、飲食物、薬剤、胃液などに含まれる酸が直接、歯面に触れることによって、歯が溶けてしまうことです。
私たちのお口の中は普段、唾液によって中性に保たれています。
食事などの影響によってお口の中が酸性に傾くと、歯のエナメル質のカルシウムやリン酸が溶けだす「脱灰」が起こりますが、唾液によるエナメル質の修復(再石灰化)によって歯が溶けたり虫歯への進行が防がれています。
(再石灰化とは、脱灰によって溶け出したカルシウムやリン酸が唾液によって再び歯に取り込まれ、歯が元に戻ることです。)
しかし、酸性への傾きが大きかったり、ダラダラと酸性のものを口にしていると、脱灰に再石灰化が追い付かなくなり、歯のエナメル質が溶けて酸蝕症になってしまいます。
酸蝕症で歯が溶けてしまう原因で多いのは飲食物に含まれる"酸"です。
特に飲み物の場合は、患者様が習慣的に摂取しており歯に悪いと自覚していないことが多いです。
清涼飲料水、スポーツドリンク、ジュース、お酢、栄養ドリンク、酒類などの酸性の飲み物は私たちの身近にあふれていて、それらにはクエン酸、リン酸、酢酸や乳酸などの酸が含まれています。
通常、酸性の飲み物は酸味があるため唾液がたくさん出て、唾液が届く部位では6分程度で中性にもどります。
(もちろん飲み方や唾液の量により個人差があります。)
唾液には、酸性に傾いたお口の中を中性に戻す作用がありますが、前歯部やかぶせ物の下などでは、酸による影響を長く受け続けます。
なので、歯にぴったりと合っていないかぶせ物や詰め物が入っている人は飲み物の影響で脱灰作用が強く出る可能性が高くなります。
酸蝕症と同様にもう1つ歯が溶ける疾患があります。
それはう蝕(虫歯)です。
細菌は私達が食べたり飲んだりした糖分を餌にしています。その細菌が作り出した酸によって、歯の表面がが溶けた状態のことをう蝕といいます。
なので、スポーツドリンクやフルーツジュースなど酸と糖の両方が含まれている飲食物をたびたび摂取すると、酸蝕症だけでなくう蝕のリスクも高まると言えます。
この酸と糖の両方が関わるものを「複合う蝕」と呼び、特徴はプラークの付着が少ないわりに進行が速く、実際レントゲンから想定されるよりも深くまでう蝕が進んでいることが多いと感じます。
この複合う蝕の対応で最も重要なことは、原因の改善です!
この改善に大切なことは、私たちのプロフェッショナルケアで、歯磨き指導や食生活の指導、年に1度はレントゲンを撮りう蝕の有無などの確認です。それと患者様自身のセルフケアです。
セルフケアでは、食生活の見直しを意識していただき、酸と糖の両方を含む飲食物の摂取を制限し、「虫歯になりやすい」環境を作らないことです。
日常的に摂取しているものを変更する、あるいはたまに摂る程度に控えていただくだけで、問題が解決することもあります。
コーヒー、炭酸水などに砂糖が入っていなければう蝕のリスクはかなり減少します。
プロフェッショナルケアとセルフケアの両方で、う蝕と酸蝕症を予防していけたらと思います。
わからない事や心配事などありましたら、いつでも声をかけてください。
いつでもお待ちしております!
歯科衛生士 林