Part 2 インプラント治療におけ…

Part 2 インプラント治療における全身状態の診査

Part 2:糖尿病と骨粗鬆症に関して

<インプラント治療を行う上での全身状態の診査>

Part2:糖尿病と骨粗鬆症に関して

 

さて今回は前回に続きインプラント治療を行う上で我々歯科医師が

知らなくてはいけないインプラント治療の予後に関わる全身疾患である糖尿病と骨粗鬆症に関して説明します。どちらの疾患も現在日本では罹患率が高いよく目にする疾患となっておりインプラント治療を含む歯科治療においては注意が必要となっています。

 

それぞれのリスクファクター示しますので今回も一つの目安としてみて下さい。

 

【糖尿病】

糖尿病に関しては世界でも増え続けていると言われており、日本においても多くの方が罹患している病気です。この糖尿病、どのように歯科治療と関わってくるかというと一番は合併症として歯周病が挙げられる点です。

これは以前から判明していることですが糖尿病と歯周病は各々が相互に影響しあっておりどちらかが悪化するともう片方も悪化することが言われています。つまり糖尿病患者さんは歯周病が悪化するリスクを常に持っているわけです。

ですのでインプラント治療に関しても糖尿病がきちんとコントロールされていなければインプラント周囲炎(インプラントの歯周病)のリスクが上がってしまいます。また糖尿病は一般的に易感染性(細菌感染を起こしやすい)であるので、インプラント手術や、その後のメインテナンスに対してもリスクとなります。

 

これらのことから糖尿病患者さんはインプラント治療を行う場合にはしっかりと糖尿病の状態が管理・コントロールされていることが大切であり、かかりつけ医との綿密な連携がとても大切です。またインプラント治療を行わない場合でも歯周病に対するリスクの点からしっかりとしたメインテナンスがとても重要になります。

 

 

【骨粗鬆症】

骨粗鬆症は骨の強度が低下し骨折しやすくなってしまう状態になることです。日本にも約1000万人以上の患者がいると言われ、高齢化に伴いその数は年々増加傾向にあります。

 

骨の強度が低下するのでインプラント治療に対して局所的なリスクファクターと言われていますがインプラント治療の成功率を低下させるといった論文と影響がなかったとする論文の両者があり現時点では明確な結論は出ておりません。

 

ただ、骨粗鬆症の場合治療薬としてビスフォスフォネート系製剤を内服している場合が散見されます。この薬は臨床的に有効性が高く現在よく使用されていますが、一つ歯科治療の観点から欠点を挙げるとすると歯科治療がきっかけとなり生じる顎骨の壊死(BRONJ BP-Related Osteonecrosis of the Jaw)があります

以前は観血処置(歯の抜歯、歯周外科手術、インプラント)がきっかけとなって生じると言われていましたが現在ではそれに加えて口腔衛生状態の不良や喫煙、歯周病や根尖性歯周炎などでも生じる可能性があると言われており注意が必要となっています。

発症率は高くはありませんが一度発症すると患者さんのQOLを下げる可能性が高いためインプラント治療を望まれてこられた患者さんに対しても将来起こり得るリスクなどを十分説明し理解していただく必要があります。

ただ個人的にはインプラント治療が全てではないので、このようなリスクがある場合には代替治療の提案も積極的に行わせていただいており患者さんが納得する形で治療を進めていきたいと思っています。